ひざの痛み

膝に溜まる水とは

膝の痛みの原因のひとつとして、よく「膝に水が溜まっている」ということが聞かれます。
特に、スポーツ選手や肥満体型の人がこのような状態になっているようですね。
この膝に水が溜まっている状態というものは、実際に普通の水が溜まっているのでしょうか?

 

実は、この場合、本当の意味での水とはちょっと違います。
膝に溜まる水は、「関節液」と呼ばれる滑液です。
滑液は、膝の一部である滑膜から分泌される液体で、これによって関節はスムーズに動けるようになります。
車に詳しい人であれば、潤滑油というものをご存知でしょう。
車体の中では、歯車などの機械部位がスムーズに摩擦なく動かせるよう、常に油を機械全体に流しているのですが、その潤滑油は、元々人間の身体の構造における滑液の働きをヒントに作られたものです。

 

潤滑油が漏れると、車は故障します。
人間も同じですね。
滑液が膝関節に溜まると、膝が腫れ、張りやむくみが生まれ、動きにくくなってしまい、悪化すると、ひどい痛みと共に歩くのも困難となります。

 

膝に溜まってしまう滑液は、血しょうの濾出液が基本となり、そこにヒアルロン酸の多糖体が加わっているものです。
滑液の役割は、単に膝を円滑に動かすための潤滑油というだけでなく、細胞組織の残骸を除去するなど、不要物を溜めないようにする働きがあります。
しかし、膝が故障すると、むしろこの液体が不要物となってしまうのです。

 

膝に溜まる水は、わたしたちの生活からイメージするお水ではなく、体液の一部なんですね。

 

膝に水が溜まりやすい人

膝に水が溜まるというトラブルは、いくつかの要因によって発生します。
基本的には、外力によって膝が故障した場合、無理な動作を何度もしてしまった場合、反復動作によって大きな負荷がかかった場合に起こる現象です。
膝関節に炎症が発生し、それによって滑膜が誤作動を起こします。
滑液が過剰に分泌されるのです。
これによって通常は吸収し切れる許容範囲を超え、その分が関節に溜まっていくという仕組みです。

 

よって、膝に水が溜まりやすい人というのは、膝を怪我しやすい、負荷をかけやすい、無理な体勢になりやすい人という事になります。
環境で言えば、スポーツ選手は間違いなく該当するでしょう。
特に、足技を多く披露するサッカー選手は、常にこの膝の水と格闘しながら競技生活を続けていく事になります。
ただ、環境だけが膝に水を溜めやすい条件ではありません。
体質的な問題もあります。

 

例えば、股関節や肩と比較し、滑膜面積が広い人は、水が溜まりやすいと言われています。
この他、関節自体が筋肉層に覆われていない人は、かなり水を溜めやすい体質と言えるでしょう。
こういった体質面での条件というものは、自分ではどうしようもないので、かなり辛いところです。
特にプロスポーツ選手になろうと夢を追い求めている人にとっては、この体質はかなり厄介ですね。
実際、膝に水を溜めやすい体質の人は、膝の痛みが慢性的になるだけでなく、稼動区域も限られて動きが鈍くなるので、センスがあっても長く競技を続けられない事があります。
単純な痛みもそうですが、水が溜まった事で動きが鈍くなるのが一番厄介なのです。

 

膝に水が溜まる原因

水が膝に溜まる原因としては、膝への外力や、無理な体勢などによる負荷が大きな原因となります。
こういった状況は、一見スポーツや事故くらいしか起こりえないように思われがちですが、実は違います。
結構、いろいろな原因で膝にダメージを受け、痛みを覚えたりするものなのです。

 

基本的に、膝に水が溜まる原因としては、関節外傷が多いのですが、この関節外傷は日常生活の中でも十分負う可能性のあり得るものです。
例えば、階段を下りている途中にバランスを崩して膝から落ちてしまったり、段のある場所に気づかずにガクンとなってしまったりすると、関節に打撲や捻れが加わり、それによって滑膜、関節包や靭帯が損傷し、炎症を引き起こす事になるのです。

 

反復動作による炎症は、スポーツのトレーニングが一番多いですが、生活習慣によっても引き起こされる事があります。
例えば、クセで毎日変な体勢で座ったり、膝を突いたままボーっとしたりする人などは危険です。

 

この他にも、リウマチや通風、あるいは離断性骨軟骨炎などの病気によって膝に水が溜まる事もあります。
離断性骨軟骨炎の原因はあまり定かではないのですが、骨の破片などの遊離体が関節腔に発生する病気です。
これによって滑膜が損傷してしまうと、膝に水が溜まり、痛みが生じます。
非常に厄介な病気です。

 

そしてなにより、肥満体型というのが一番水を溜める原因となります。
スポーツ選手ではない一般の人が膝に水を溜める場合、その多くは自分の体重で膝に過大な負担をかけるケースです。

 

水が溜まった際の症状

どのような病気にでも初期症状というものは存在し、それをそのまま放置すると、大抵は悪化していきます。
しかしながら、その初期症状を自覚したり、肉眼で確認したりする事は、かなり困難といえます。
大抵、自覚症状が出ている時には、初期段階から中期へと移行している状態だからです。
初期段階で何らかの病気を見つけるという事は、ほとんどの場合、別件で病院を訪れたケースです。
それ以外で見つける事は、非常に難しいといえます。

 

では、膝に水が溜まる場合はどうかというと、やはり初期段階ではその症状はわかりにくいようです。
まったく何も感じないわけではなく、違和感が発生しますし、若干赤く腫れ上がりますが、この違和感が出た時点で「病院へ行こう」と思い立つ人はまずいないですし、膝に水が溜まったと自覚する人もそう多くないでしょう。
既に何度かそういう経験がある人であれば、この段階で把握できるかもしれませんが、それ以外の人だと、体調が悪いとか、虫に刺されたとか、その程度の認識である場合がほとんどです。

 

ある程度病状が進行するまでは、痛みはほとんどありません。
違和感、あるいは張り、膨満感といった、小さな不快感が発生します。
これをしばらく放置し、原因となる行為や環境をそのまま継続していると、腫れがひどくなり、馬の蹄のような形になってきます。
その頃には、痛みがかなり出てきて、歩行にも影響を及ぼす状態となっているでしょう。

 

水が溜まった際の対処法

赤く腫れ上がった膝に対して、考えられる対処法はいくつかあります。
もちろん、膝に水が溜まっている、すなわち関節水腫の気があるという推測が立てば、すぐに病院に行って水を抜いてもらうのがベストと思われますが、注射針で水を抜いてもらうのは、癖になってしまうという方もいますので、よく考えたほうがいいかもしれません。実際、私が怪我で水が溜まったときには水を抜かないで、湿布薬とマッサージでゆっくり時間をかけました。

 

病院へ行く時間ではない時、あるいは病院へ行く時間がない時など、必ずしもすぐに病院へ行ける環境が整っていない場合は、自己対処が必要となってきます。
そういった場合は、何よりまず冷やす事が大事です。
冷やす事で炎症を抑え、痛みを和らげたり、一時的に腫れを引かせたりする事ができます。
病院へ行くにしても、まずは冷やす事です。

 

冷やす事以外にも、圧迫する事が有効ですね。
ただ、圧迫といっても、ギュッと押さえ込んだり、直接布を強く巻いたりすると、痛みが増す危険があります。
その為、まずはスポンジやガーゼなどといった柔らかい素材を用意し、それをあてて、その上から弾力性のある包帯でグルグルに巻いてしまうのが一番効果的です。
ただし、締め付けの強さは血液等の循環に支障がない程度にしましょう。

 

一番良いのは、冷やしつつの圧迫です。
冷やしたタオルやスポンジをあて、包帯を使って固定すると、かなり楽になれます。
包帯の上から氷嚢やアイスノンを当てても良いでしょう。

 

重要なのは、腫れていると自覚したら、まず冷やす事です。
どのような原因でそうなっていても、冷やすという行為はまず有効だからです。
病院へ行く間にさらに腫れ上がるということも考えられるので、とにかくまずは状態をキープすることが重要です。