ひざの痛み

変形性膝関節症の定義

ある程度長く生きていると、必ずしも健常体でいられるとは限らなくなってきます。
それは、仕方のない事といえます。
どれだけ健康に気を使っていても、癌になる人はなりますし、交通事故で身体が動かなくなる事もあり得ます。
それは、ある意味人間の抱える運命と言えます。
老化という現象が人間の身体に宿命付けられている以上、いつまでも健康というわけにはいきません。

 

実際、膝に関しても、60、70と年齢を重ねている状態まで万全の状態を保つのは不可能です。
例えば、毎日しっかりと歯を磨いて管理していても、いつかは歯茎が衰え、歯は抜けていきます。
それと同じで、膝の中にある軟骨は確実にすり減りますし、筋力も衰えます。
そうなると、膝の関節が炎症を起こしたり、変形したりします。
これが「変形性膝関節症」という病気の定義です。
老化を始め、様々な要因から膝関節が炎症を起こし、また変形してしまうのです。
変形というと、事故や重い病気で骨が曲がったりするようなものを想像してしまいますが、そこまで極端な変形ではなく、筋力の低下などで少しずつ定位置からズレるという状況を指します。
それでも、非常に厄介な状況なのです。

 

変形性膝関節症は、軟骨が一定以上すり減った場合に特によく起こり、50歳を過ぎてくるあたりから患者数が非常に増えてきます。
その為、これくらいの年齢の方で膝に痛みが発生したら、まずこの変形性膝関節症を疑いましょう。
加齢による必然的な痛みとはいえ、甘んじて受ける必要はありません。
病院へ行って治療することで、回復は無理でも、それ以上の悪化は防げます。

変形性膝関節症の主な原因

数ある膝の痛みの中のひとつに、膝の病気というケースがありますが、その中でも一番多くの高齢者が抱えている病気は、恐らく「変形性膝関節症」ではないでしょうか。
そして同時に、この変形性膝関節症は高齢化社会が進む中で毎年患者数を増やしている病気でもあります。
このままだと、国民病と呼ばれるような病気となり、誰もが痛みを抱える事態になってしまいかねません。

 

ただ、現時点では変形性膝関節症に対する劇的な治療効果や予防効果を発揮する方法が、なかなか確立できていません。
というのも、変形性膝関節症は、今のところはっきりした原因がわかっていないのです。

 

変形性膝関節症は、関節軟骨がすり減ることで起こる病気です。
ただ、加齢による自然磨耗だけでは、病気にまで発展するケースはそう多くありません。
その為、詳しい原因が不明といわれています。
外傷による二次性の要因はある程度はっきりしていますが、一次性の要因は、現時点では解明されていないのが現状なのです。

 

一応、仮説はいくつか確立されています。
例えば、軟骨気質の変異です。
こういった現象は、主にホルモンの変調によって起こる為、その方面での原因が仮説として挙げられています。
関節軟骨中の成分がバランスを崩し、新しい別の関節軟骨を体が作る事で、膝が痛んでいるというメカニズムのようですね。
また、成分が過剰生産されるケースや、酵素の暴走なども考えられています。

 

この他にも、関節軟骨と隣接している骨の損傷や、血液循環の不順などが原因と見られていますが、どれも決定打に欠けているのが現状です。

 

変形性膝関節症の主な症状

変形性膝関節症の初期段階は、膝に違和感を覚える程度で、痛みはほとんどありません。
この時点で変形性膝関節症を疑う人は、まずいないのではないでしょうか。
ただ、重い荷物を持った時や、無理な体勢をとった時などに膝が痛むということはあります。
しかし、それによって「膝がちょっと変だ」と感じても、すぐにその痛みは治まるので、病院へ行くという考えはまず出てこないでしょう。

 

この初期段階からある程度時間が経つと、徐々に中期の症状が出てきます。
この段階で、膝の痛みは慢性化してくるのです。
違和感が明確に痛みへと変わり始め、正座をしたり階段を上ったりする時にはかなりの痛みが出てきます。
病院へ行く意思のある人であれば、この段階で大抵医師に相談しに行く段階ですね。

 

この中期段階では、膝の外見にも変化が見えてきます。
赤く腫れたり、熱を持ったり、むくんだりするようになります。
明らかにおかしいと感じるのは、あるいはこの外見の変化を目の当たりにした時かもしれません。

 

これをさらに放置していると、末期症状へと進行します。
立ち上がる事も困難になり、膝の形も変形が顕著で、関節がかなり目立つようになってしまいます。
こうなってくると、日常生活に大きな影響を与える事となり、外出もできなくなっていきます。
高齢者の方の場合は、それが原因で欝や認知症を引き起こすケースが非常に多いようです。

 

こうならない為には、できるだけ早期に、遅くても中期の段階で病院へ行き、正しい指示を仰ぐことが必要なのです。

 

変形性膝関節症に注意が必要な人

膝の病気のひとつである変形性膝関節症は、比較的患者の傾向がはっきりしている病気です。
まず、一番顕著なのは、高齢者ほどこの病気になりやすいという点です。
年齢を重ねれば重ねるほど、病気になる可能性が高くなります。
特に、50歳を超えたあたりからその可能性は一気に上がるので、注意が必要です。

 

男女別で見ると、男性と比較して女性の方がかなり多いのがわかります。
特に、60歳以上の女性の場合は、約4割が変形性膝関節症の兆候が見られるようです。
完全に痛みがあるわけではないものの、違和感を膝に覚えるという人は非常に多いみたいです。
それに対し、男性はその半分以下です。

 

なぜ男性より女性の方が多いのかというと、それは実はハッキリしていません。
というのも、変形性膝関節症自体の一次的な原因が明確にわかってはいないからです。
ただ、女性にはO脚の人が多く、それが原因のひとつと言われています。
O脚は、女性の座り方特有の変形で、これによって膝に負担がかかる体型となってしまい、軟骨の磨耗が激しくなってしまう、という見解が成されています。
実際、かなり有力な説と言えるでしょう。

 

また、ハイヒールなどによって足の体重分散が上手くいかないという説もありますが、これは60歳以上の高齢者にはあまりあてはまらないので、確実とは言い辛い説です。
とはいえ、女性が男性と比較し、より美への意識が強く、その結果アンバランスな負荷のかかる体型や服装をしていて、その結果、変形性膝関節症となりやすい状況を作っているというのは、あながち間違いとも思えません。

 

変形性膝関節症はかなりの痛みを伴う病気です。
老後の生活のことを考えるならば、若いころの若干の痛みを我慢して、O脚の矯正を行っておいた方が良いかもしれません。

変形性膝関節症を診断する方法

自分が変形性膝関節症であると判断する為には、病院へ行って診断を受けるのが一番確実です。
ただ、まだ働いているという人にとって、病院へ行くという選択肢はなかなか実現が難しいのも事実です。
そうなってくるとどうしても後回しになってしまうのが、この変形性膝関節症の厄介な部分です。

 

膝の痛みは、激痛であれば病院へ行く気にもなりますが、鈍痛の場合はなかなかそこまでは思い立たないものです。
これが仮に頭痛であったり、胸の辺りであったりした場合は、重大な病気を思い浮かべる人も多いでしょうが、膝の痛みは成長期に経験している人がほとんどなので、あまり危機感を持たれないのです。
その為、病院へ行く人はそう多くないのです。

 

それなら、いっそ自分で診断してみよう…という事で、自分で変形性膝関節症かどうかを判断する基準をいくつか紹介します。
一つや二つ該当したからと言って、必ずしも即病気というわけではありませんが、半分くらい該当する人はすぐに病院へ行った方が良いでしょう。

 

まず、階段の上り下りの際に膝の痛みがある場合。
正座をした時に膝が痛み、耐えられない場合。
膝をまっすぐ伸ばせない場合。
膝の皿の上を押してみると、張りを感じるという場合。
膝の感覚がやや麻痺している場合。
左右の膝の形が少しでも異なっている場合。
膝と膝の間に大きな隙間がある場合。
膝の屈伸時に妙な音がする場合。

 

これらの症状が半分ほど該当する場合は、病院での診断を受けましょう。
こういった症状については、問診の際に聞かれる事もあるので、あらかじめ把握できている分、円滑に診断が進むでしょう。