漢方薬について

気・血・水

漢方医学における治療方針の決定(漢方薬の選択)は、それぞれの人の「証」に基づいて行われます。代表的な「証」としては、1.虚実・・・虚証と実証、2.陰陽・・・陰証と陽証、および3.気・血・水があります。

 

「気・血・水」とは、漢方医学における身体の生理機構を意味する言葉です。漢方医学では、身体が病気に犯されている状態と病気の進行具合を意味する言葉として「病邪侵攻」という言葉は用いられますが、気・血・水では、身体のどの部分が、病邪侵攻を受けているかに焦点を当てます。

 

「気」という見えないエネルギーが、身体を循環することで、健康な生活を送ることができる、とするのが、漢方医学における考え方です。この気の流れが滞ると、身体に異常が生じます。漢方では、この気の滞りは、神経や精神機能が障害されていると考えらえられます。たとえば、気が上にのぼった状態の場合、症状としてはのぼせ感として現れます。したがって、流れを正常に戻す順気剤が用いられることになるのです。

 

「血」とは、ホルモンや血液にあたるものです。これらの循環に支障が生じ、血液が滞っている状態が「お血」です。この状態を改善するために用いられるのが、駆お血剤です。

 

「水」とは、体液のことです。たとえば、水毒というのは、体液が身体の一部に偏っている状態です。水分代謝が不調になっていると考えられます。したがって、利尿剤が用いられます。

 

病気は、気・血・水のどれかひとつが独立して原因となるのではなく、複合的に関連して症状が現れると考えられます。

 

陰陽

漢方医学における治療方針の決定、つまり漢方薬の選択は、それぞれの人の「証」に基づいて行われます。代表的な「証」には次のものがあります:1.虚実(虚証と実証)、2.陰陽(陰証と陽証)、3.気・血・水

 

漢方医学では、病気というのは体力と病邪の闘いとしてとらえます。陰陽は、この闘いにおける病邪の進行度と体力の消耗度をみるものさしと考えるといいでしょう。漢方医学の重要な「証」のひとつである、虚実が体力の質的な充実さを示す証であるとすれば、陰陽は、体力を量的なものからとらえるものと考えられます。

 

●「陰証」
陰証の人は、病気の状態が消極的、静的、潜伏的で、寒冷の傾向があります。このような人の場合、寒気を訴え、手足が冷えて、顔色も青白いのが特徴で、熱が出るといった症状はありません。したがって、身体を温める作用のある「附子(ぶし)」や「乾姜(かんきょう)」を含む漢方薬を用いて治療を行います。

 

●「陽証」
陽証の人は、病気の状態が積極的、動的、開放的で、熱性の傾向がみられます。炎症や充血、発熱といった症状を示すことが多いことから、身体を冷やし、熱をとりのぞく作用のある漢方薬を用います。たとえば、「桂皮(けいひ)」や「麻黄(まおう)」などを含むものです。

 

「陰陽」とは、病気の進行の具合と体力の消耗度をみるもので、病気の勢いとその人の体力の関係を量的な面からとらえて割り出します。病気のかかりはじめで、体力が病邪よりも優位にある時期を陽証期、病気が進行して体力が病邪よりも劣った状態にある時期を陰証期といいます。

 

風邪と漢方薬

風邪と、ひとくちに言ってもその症状や原因はさまざまです。
悪寒(おかん)、発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛など、症状はさまざまであり、しかも単独で現れるのではなく、複合的に生じるのが一般です。また、風邪の原因と考えられるウィルスは、100種類をはるかに超えているといわれます。また、細菌や寒さなども風邪の原因となることがあります。

 

漢方医学では、まず、その人の症状から二つのタイプに分けます。
体力があって発熱や頭痛、関節痛、喉頭痛などの痛みを伴うものを「陽証」といいます。一方、体力が衰え、悪寒や全身の倦怠感を覚えるものは「陰証」とされます。
さらに、症状が身体のどこに現れているかも、漢方薬を選択する重要なかぎとなります。

 

体力が充実していて、頭痛や悪寒といった、身体の外に証が現れている人(初期症状の人で陽証)には、「葛根湯(かっこんとう)」が効きます。しかも悪寒がしたらすぐに葛根湯を飲むのが早く治すかぎとなります。一方、同じ初期症状でも虚弱な体質の人は、「桂枝湯(けいしとう)」が効きます。さらに体力が低下していて、不安や不眠などの精神症状を伴う場合(陰証)には、「香蘇散(こうそさん)」が適しているといわれます。

 

ただし、漢方薬は、西洋薬と異なり、病名や症状だけから適切な処方を選択することは出来ません。病気の人それぞれの「証」といって、体質、体力、抵抗力、病気の進行具合などを総合的な判断して用いる漢方薬を決定するのです。証の判断は、漢方医学の専門家にゆだねるのが理想的です。ここで示した漢方薬は、あくまでもおおよその目安と考えてください。

 

 

高血圧症と漢方薬

高血圧症の人は、概して身体がしっかりとしたタイプが多く、活動的で、積極的です。これは漢方医学の観点からは、「陽証で実証」と分類されます。そのため、高血圧症に対して用いられるのは、ほとんどが陽証、実証向きの漢方薬です。そのなかで、それぞれの症状に合わせて、適切な漢方薬が選択されます。

 

たとえば、便秘を伴う場合には「大柴胡湯(だいさいことう)」や「サンオウシャシントウ」、不眠やいらいらの場合は、「サイコカリュウコツボレイトウ」、肩こりやめまい、頭痛、には「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」といったように、症状に応じて適切な漢方薬が判断されるのです。

 

一方、虚証タイプ、つまり体力が弱いタイプの人でも高血圧症の方はいます。そのような方に向く漢方薬もあります。こちらは冷えや排尿障害に対して効果があるといわれる漢方薬「八味地黄丸(はちみじおうがん)」などが使われます。この薬は、お年を召した方に用いられます。

 

つまり、漢方薬は、降圧効果を目的で用いられることももちろんありますが、むしろ高血圧症に伴う、肩こりや頭痛、のぼせ、めまい、不眠、不安感などの自覚症状に対して効果を期待されているのです。したがって、多くの場合、降圧薬との併用療法や、減塩、低脂肪食などの食事療法の継続が必要となります。

 

注意:漢方薬は、西洋薬と異なり、病名や症状だけから適切な処方を選択することは出来ません。病気の人それぞれの「証」といって、体質、体力、抵抗力、病気の進行具合などを総合的な判断して用いる漢方薬を決定するのです。証の判断は、漢方医学の専門家にゆだねるのが理想的です。ここで示した漢方薬は、あくまでもおおよその目安と考えてください。

 

 

 

 

健康管理と健康増進



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