漢方薬について

漢方薬と健康保険

漢方治療は、昭和51年に、厚生省が漢方薬の健康保険治療の適用を承認するようになって以来、見直しが行われ、広く普及するようになってきました。しかし、すべての漢方薬に健康保険がきくわけではありません。現在のところ処方数は、147種と限られており、しかも保険診療が認められるのは、これらの漢方薬に対して、医師の処方箋がある場合に限ってです。しかし、過去の治験例からみると、この147種類に限らず、もっとずっと多くの処方が用いられており、その効果も現れています。

 

漢方薬には、大きく2つに分類されます:せんじ薬とエキス製剤(医療用漢方製剤)です。
医療用漢方製剤というのは、生薬の抽出エキスを顆粒、細粒、粉末、錠剤なおにしたもので、いわゆる病院でもらう漢方薬です。

 

これらのうち、保険診療が承認されているのは、エキス製剤に関してのみです。しかし、実際、漢方の専門医のなかには、漢方製剤以外の処方を用いる医師もいます。そのため、漢方治療を行う医療機関のなかにも、保険が適応されるエキス製剤のみを扱う機関、保険適応外のエキス製剤のみを扱う機関、さらに両方を扱う機関があるのです。

 

したがって、漢方治療の保険診療を希望される方は、ご自身が診察を受ける医療機関が保険診療を行っているかどうかを、事前に確認してうえで診察を受ける必要があります。また保険適応内のエキス製剤と適応外のエキス製剤の両方を扱っている医療機関の場合には、保険が適応される範囲内での処方をしてもらえるよう、申し出ておくことが大切です。

 

漢方薬の副作用

漢方薬は、全般的に、現代薬(西洋薬、化学薬)と比較して作用が穏やかな薬といえます。副作用も比較的少なく、軽いといわれます。しかしまったくないわけではありませんから、素人判断で用いるのは、禁物です。そもそも漢方薬は、個人の「証」に合わせて用いるのが原則です。当人の証に適していない場合、かえって症状の悪化をまねく恐れがあります。たとえば、虚証の人に対して強力な下剤や発汗薬を用いるのは適していないといえるでしょう。

 

また、証に合った漢方薬を用いているにもかかわらず、不快な症状が生じる場合があります。これは「瞑眩(めいけん)」と呼ばれるものです。副作用と症状が似ていることから区別がつきにくいことがあります。しかし、瞑眩の場合、症状が出るのは薬を服用し始めた最初の2?3日間です。その後は、症状が治まり、快方に向かいます。別の角度から考えれば、これは薬が身体に作用しているという証拠でもあるわけですから、漢方医学ではむしろ好ましい反応とされます。

 

副作用を起こしやすい漢方薬とその副作用の症状を以下にあげます。

 

●大黄:腹痛、下痢、食欲不振。
●麻黄:食欲不振、多汗、不眠、動悸。重症の心臓病の人の場合、狭心症を起こす恐れがあるので注意が必要です。
●甘草:むくみ、血圧の上昇。甘草は、鎮痛、消炎効果があることから、漢方薬の多くに含まれていますので、意識して気をつけていることが必要です。
●附子:熱感、ほてり、発汗、しびれ。
●地黄:胃のもたれ感。

 

せんじ薬とエキス製剤

漢方薬は大きくわけて、せんじ薬とエキス製剤に2分されます。保険診療が認められているのは、エキス製剤(医療用漢方製剤)の、医師の処方箋がある場合についてのみです。したがって病院でもらう漢方薬、医療用漢方製剤となります。これは生薬の抽出エキスを顆粒、細粒、粉末、錠剤などにしたものですが、本来の漢方薬の形である、せんじ薬と比べて効果に大きな違いはありません。
せんじ薬、エキス製剤のいずれにしても、古典(「傷寒論(しょうかんろん)」など)に基づいて作られ、基本的な成分に違いはありません。漢方薬は、もともと個人に合わせて用いられるものですが、エキス製剤よりもせんじ薬のほうが、さらに微妙な個人差に対応しやすいというメリットはあります。せんじ薬の場合は、微妙なさじ加減で比率を調整できるからでし。ただ、せんじ薬は、煮出し方などでも微妙に違ってきますので、取り扱いが難しいということもいえるでしょう。

 

また、漢方薬の場合、西洋薬と比べて長期間にわたる服用が必要というイメージがあります。病状に即効的な効果があるとされる西洋薬に比べ、漢方薬は比較的作用が穏やかだからでしょう。しかし実際、漢方薬の服用を開始してからどれほどで効果が得られるかは、病気の種類や程度、また患者さんご本人の状態によってもさまざまです。概して、風邪や湿疹などの、急性の病気では、服用して数10分?3日程度で改善することもあり、効果が早いようです。一方、慢性の病気でも証がぴったり合っていると即効的な効果が期待できます。

 

 

漢方薬の得意分野と漢方専門医

近年、西洋医学を用いる医療機関でも、漢方薬を治療に取り入れるところが多くなってきています。現代医学では効果がなかった難病が、漢方医学で改善するという例が実際にあるからです。しかし漢方薬は万能薬ではありません。それは西洋薬と同様です。現代医学が効果をあげている領域、たとえば癌治療など、もありますし、漢方医学が得意とする分野もあります。漢方薬が比較的効果をあげている領域は、以下の通りです。

 

●片頭痛、肩こりなどの習慣的疾患
●花粉症などの季節的疾患
●月経痛などの周期的疾患
●虚弱体質や冷え性などの流行性疾患

 

漢方専門医
西洋医学による治療を行っている大学病院や公立の病院でも漢方薬による治療を併用して取り入れているところはありますが、本格的に漢方治療を受けたい場合には、やはり漢方の専門医にかかるほうがよいでしょう。
漢方専門医というのは、医師免許をとったうえでさらに漢方の勉強もした人たちのことをさします。ただし現在の日本では、漢方医、あるいは漢方科といった名称を掲げることは法律で認められていません。したがって、漢方医学を専門的に扱う機関や医師を求める場合には、漢方薬のメーカーや医師団体に問い合わせてみてはいかがでしょう。また、口伝でそのような医師、あるいは医療機関を探す人も多いようです。
漢方薬は、現代薬と比較して副作用が軽いとはいえますが、素人判断で用いるのは好ましくありません。市販の漢方薬を用いる際にも、自己判断に頼るべきではないでしょう。

 

健康管理と健康増進



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